物流業界入門

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【セイノーHDとAZ-COM丸和HDが描く物流BCPの新時代】――競争から共創へ。物流インフラはどう変わるのか

セイノーホールディングスとAZ-COM丸和ホールディングスは、「物流業界BCPネットワーク構想」を始動すると発表しました。

一見すると、

「災害時の相互支援体制」

というBCP(事業継続計画)のニュースです。

しかし、この構想の本質はそこではありません。

私は以前、「西濃運輸会長人事」の記事で、

物流業界は「競争」から「共創」へ移行し始めている 【西濃運輸会長人事の裏側】セイノーHDとAZ-COM丸和HDが目指す「物流インフラ」の未来 - 物流業界入門

という考察を書きました。

今回のBCPネットワーク構想は、

その思想を有事だけでなく物流インフラ全体へ広げる取り組みと言えるでしょう。


■ BCPの対象が変わった

これまでBCPとは、

「自社をどう守るか」

という考え方でした。

自社の車両。

自社の倉庫。

自社の社員。

自社の顧客。

すべて企業単位で考えられていました。

しかし今回の構想では違います。

AZ-COM丸和HDが培ってきたBCP物流のノウハウと、約3,000社が参加するAZ-COMネットワーク、

そしてセイノーHDが推進する「Team Green Logistics」と「O.P.P.(オープン・パブリック・プラットフォーム)」を組み合わせ、

企業の枠を超えた物流維持体制を構築するとしています。

つまり、

守る対象が

会社

ではなく

物流そのもの

へ変わったのです。


■ なぜ企業単独では限界なのか

南海トラフ巨大地震。

首都直下地震。

集中豪雨。

豪雪。

感染症。

近年の災害は、

物流会社一社だけで対応できる規模ではありません。

車両を保有していても道路が寸断されれば動けません。

倉庫があっても人員が不足すれば機能しません。

拠点が残っていても、

燃料が届かなければ配送は止まります。

つまり、

物流は一社で完結するインフラではないのです。

だから企業ごとのBCPだけでは、

社会を守れなくなっています。


■ 「競争から共創へ」がBCPにも広がった

セイノーHDは以前から、

「競争から共創へ」

という考え方を掲げています。

これは単なる共同配送ではありません。

物流ネットワークそのものを社会全体で最適化する思想です。

今回の構想は、

その思想が災害対応へも拡張されたと言えます。

競争する企業同士でも、

社会インフラだけは共同で守る。

これは従来の物流会社という枠組みでは考えられなかった発想です。


■ 共有するのはトラックではない

共同物流というと、

車両や倉庫を共有するイメージがあります。

しかし今回の構想で共有されるものは、

それだけではありません。

共有されるのは、

BCPの運営ノウハウ。

災害対応の知見。

人材育成。

共同訓練。

支援体制。

そして、

企業同士の信頼関係です。

つまり、

物流資産ではなく、

物流を動かす知識と関係性を共有しようとしているのです。


■ 本当に重要なのは「接続」である

私は以前から、

物流問題の本質は

「接続不良」

だと考えています。

今回の構想も、

その視点で見ると非常に興味深く映ります。

災害時に必要なのは、

新しいトラックではありません。

必要なのは、

どの会社が、

どこで、

何を持ち、

誰が動けるのか。

それを瞬時につなぐ仕組みです。

つまり、

BCPとは、

物流資源を増やすことではなく、

物流資源を再接続することなのです。


■ 平時の接続が有事を支える

災害時だけ協力しようとしても、

実際には機能しません。

連絡体制。

運用ルール。

情報共有。

役割分担。

人材交流。

これらは、

平時から構築されていなければ、

有事には動かないからです。

だから今回の構想では、

共同訓練や人材育成が盛り込まれています。

重要なのは訓練そのものではありません。

企業同士の接続を平時から維持することです。


■ 「所有」から「利用」へ

物流業界は長年、

どれだけ多くのトラックを保有するか。

どれだけ多くの物流センターを持つか。

それが競争力でした。

しかし人口減少社会では、

同じ地域に複数企業が重複した物流網を維持すること自体が、

社会全体では非効率になりつつあります。

だから今、

競争力は

「所有」

ではなく、

「必要な時に必要な資源を使えること」

へ変わっています。

BCPネットワーク構想も、

まさにその延長線上にあります。


■ 社会接続へ

今回の発表は、

BCPの話ではありません。

物流会社同士の提携でもありません。

本質は、

物流インフラの運営思想そのものが変わり始めたことです。

これまで物流会社は、

「自社の物流を止めない」

ことを目標としてきました。

しかしこれから求められるのは、

「社会の物流を止めない」

ことです。

そのためには、

一社だけでは限界があります。

必要なのは、

企業を超えた接続です。

情報を接続する。

人を接続する。

車両を接続する。

拠点を接続する。

そして、

企業そのものを接続する。

私は以前、

「物流会社は物流インフラ企業へ進化する」

という考察を書きました。

【西濃運輸会長人事の裏側】セイノーHDとAZ-COM丸和HDが目指す「物流インフラ」の未来 - 物流業界入門

今回のBCPネットワーク構想は、

まさにその流れを象徴する取り組みです。

物流とは、

モノを運ぶ仕事ではありません。

社会を止めない仕事です。

そして社会を止めないためには、

競争だけでは足りません。

これからの物流に必要なのは、

誰が一番多く運ぶかではなく、

誰が最も多くの企業と社会を接続できるかなのではないでしょうか。