三菱ロジスネクストは、LIXILと共同でナトリウムイオン電池を搭載したバッテリー式フォークリフトの実証試験を実施しました。
実証試験は2026年3月から5月までLIXIL一関工場(岩手県一関市)で行われ、稼働時間や車両性能などの測定・記録を完了。その結果、フォークリフト用途として十分使用できることを確認しました。
今後はナトリウムイオン電池の普及状況を踏まえながら、実用化・活用可能性の検証を進めるとしています。
一見すると、
「新しい電池の実証実験」
という技術ニュースです。
しかし、物流の視点から見ると、本当に変わろうとしているのは電池ではありません。
物流インフラを支えるエネルギーの考え方そのものです。
フォークリフトは物流センターの心臓部
物流センターでは、
荷物を運んでいるのはトラックだけではありません。
入荷。
保管。
ピッキング。
出荷。
そのすべてを支えているのがフォークリフトです。
もしフォークリフトが止まれば、
倉庫全体が止まります。
だから物流センターでは、
フォークリフトは単なる荷役機械ではなく、
物流を動かし続ける基幹インフラなのです。
なぜ今、ナトリウムなのか
現在の電動フォークリフトは、
鉛蓄電池が主流です。
近年はリチウムイオン電池搭載モデルも急速に増えています。
三菱ロジスネクストも2023年からリチウムイオン仕様をラインアップへ追加しています。
では、
さらにナトリウムイオン電池を開発する理由は何でしょうか。
答えは、
「資源リスク」です。
リチウムイオン電池には、
リチウムなど特定資源への依存があります。
一方、
ナトリウムは地球上に豊富に存在し、
供給地域も比較的偏っていません。
つまり、
将来的な供給安定性に優れる可能性があります。
物流は止められません。
だからこそ、
電池も「調達できること」が重要になるのです。
実は物流に向いている電池だった
ナトリウムイオン電池には、
物流現場と相性の良い特徴があります。
① 低温環境に強い
冷凍・冷蔵倉庫では、
一般的な電池は性能が低下しやすくなります。
ナトリウムイオン電池は、
低温環境でも性能を維持しやすい特徴があります。
これは食品物流や医薬品物流では大きなメリットになります。
② 資源調達リスクを減らせる
物流会社は、
電池価格そのものよりも、
「安定して調達できるか」
を重視します。
どれほど高性能でも、
供給が止まれば物流は止まります。
資源が豊富なナトリウムは、
将来的に物流インフラの安定性を高める可能性があります。
③ フォークリフトだから実証しやすい
ここも非常に面白いポイントです。
EV乗用車は、
長距離。
高速走行。
航続距離。
急速充電。
さまざまな性能が求められます。
一方、
フォークリフトは、
決められた物流センター内で稼働します。
走行距離も限定的です。
だからこそ、
新しい電池を実証するには最適な機械なのです。
実際、海外でもナトリウムイオン電池をフォークリフトへ採用する動きが始まっています。
本当にすごいのは「電池」ではない
ニュースでは、
「ナトリウムイオン電池」
という言葉が注目されます。
しかし、
本当に評価すべきなのは、
LIXILの実工場で数か月にわたり実証したことです。
研究室ではありません。
実際に製造現場で使い、
稼働時間や性能を検証した。
ここに大きな意味があります。
物流技術は、
机上で完成するものではありません。
現場で使えて初めて技術になります。
今回の実証は、
その第一歩と言えるでしょう。
物流の電動化は第二段階へ入る
これまで物流業界では、
「エンジンから電動へ」
という転換が進んできました。
しかし、
これから始まるのは、
「どの電池を選ぶか」
という競争です。
鉛蓄電池。
リチウムイオン電池。
そしてナトリウムイオン電池。
用途によって最適な電池を選ぶ時代になります。
冷凍倉庫。
24時間稼働。
災害対応。
コスト重視。
それぞれで最適解は変わっていくでしょう。
おわりに
今回の実証試験は、
新型フォークリフトのニュースではありません。
物流センターを支えるエネルギーを、
より安定的で持続可能なものへ変えようとする挑戦です。
物流は、
トラックだけでは動きません。
倉庫も、
フォークリフトも、
電池も、
すべてが物流インフラです。
物流とは運ぶ産業ではありません。物流とは、モノだけでなく、その物流を支えるエネルギーまで設計する社会インフラなのである。