ニチレイへの不正アクセスによるシステム障害は、物流会社だけの問題では終わりませんでした。
【ニチレイへの不正アクセスが示した本当の危機】――止まったのはシステムではない。「物流の時間」である - 物流業界入門
日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は7月14日、食材配送を委託しているニチレイのシステム障害を受け、全国の店舗で商品の一部品切れや販売メニューの制限、営業時間の短縮、臨時休業が発生する可能性があると発表しました。
さらに、
- オンライン注文
- モバイルオーダー
- デリバリー
- 配達代行サービス
についても一時停止となり、復旧時期は未定としています。
前日の段階では、
「冷蔵倉庫の入出庫業務」
「冷凍食品の出荷業務」
への影響が公表されていました。
そして今回、その影響が実際に全国の外食チェーンへ波及したことが明らかになりました。
一見すると、
「ケンタッキーの営業への影響」
というニュースです。
しかし物流の視点から見ると、本当に止まったのは店舗営業ではありません。
物流センターから店舗までを結ぶ、外食サプライチェーンそのものです。
システム障害は物流障害へ変わった
7月13日にニチレイが公表した時点では、
影響は
- 冷蔵倉庫の入出庫
- 冷凍食品の出荷
に限定されていました。
しかし翌14日には、
KFCが全国店舗への影響を正式に公表しました。
つまり、
倉庫で起きたシステム障害が、
店舗営業へ波及したことになります。
これは物流でいう
サプライチェーンの連鎖障害です。
物流は、
工場。
物流センター。
配送センター。
店舗。
消費者。
この一連の流れが止まらないことで成立しています。
その途中の一か所でも機能を失えば、
影響は下流へ連鎖していきます。
今回まさに、それが現実となりました。
「在庫がある」のに販売できない時代
一般の人は、
「倉庫に商品があるなら届ければいい」
と思うかもしれません。
しかし現在の物流はそうではありません。
物流センターでは、
WMS(倉庫管理システム)が
- 入庫
- 在庫管理
- ピッキング
- 出荷指示
- 配送管理
までを一元管理しています。
システムが停止すると、
在庫が実際に存在していても、
どの商品を、
どの店舗へ、
どの便で出荷するかを正確に管理できなくなります。
冷凍・冷蔵食品では、
誤出荷や配送遅延が食品ロスや品質管理上の問題につながるため、
無理に出荷を継続することは極めて困難です。
つまり、
商品があることと、商品を供給できることは、もはや同じ意味ではないのです。
KFCが止まったのは「配送会社」が止まったからではない
今回、
配送トラックが不足したわけではありません。
ドライバー不足でもありません。
道路が通行止めになったわけでもありません。
止まったのは、
物流を制御する情報システムです。
そして、
情報システムが停止した結果、
配送計画が立てられず、
店舗への納品にも影響が及びました。
つまり、
現代の物流では
情報が流れなければ、モノも流れないということです。
物流DXが進んだ現在では、
情報インフラは道路やトラックと同じくらい重要な物流インフラになっています。
外食チェーンは「店舗」ではなく「物流」で営業している
今回の事案で改めて分かったのは、
全国チェーンの競争力は、
店舗数だけでは決まらないということです。
外食チェーンでは、
店舗は最終地点に過ぎません。
その裏側には、
製造。
冷蔵・冷凍物流。
センター運営。
配送。
発注システム。
在庫管理。
これらが一体となって機能しています。
どれか一つでも止まれば、
店舗は営業を続けることが難しくなります。
つまり、
KFCが全国規模で営業できている理由は、
店舗運営だけではなく、
高度に最適化された物流ネットワークが存在するからなのです。
サイバー攻撃は企業ではなく「サプライチェーン」を狙う時代へ
現時点でニチレイは、
個人情報や顧客データの外部流出は確認されていないとしています。
しかし、
今回の影響を見る限り、
攻撃によって最も大きな被害を受けたのは、
情報ではありません。
物流機能そのものです。
近年のサイバー攻撃は、
情報窃取だけではなく、
業務停止を引き起こすことを目的としたケースも増えています。
物流会社への攻撃は、
一社だけを止めるものではありません。
その先にあるメーカー。
外食。
小売。
消費者。
サプライチェーン全体へ影響が広がります。
今回のKFCへの波及は、
その現実を象徴する出来事と言えるでしょう。
荷主企業が見直すべきもの
今回の事案は、
物流会社だけの課題ではありません。
荷主企業も、
物流を委託して終わりではなく、
物流リスクそのものを経営課題として考える必要があります。
例えば、
- 複数物流会社の活用
- システム障害時の代替オペレーション
- 出荷優先順位の設定
- サイバーBCPの整備
- サプライチェーン全体での情報共有
こうした体制づくりが、
これまで以上に重要になります。
物流BCPは、
地震や豪雨だけを想定する時代ではありません。
サイバー攻撃も物流を止める災害の一つとして備えることが求められています。
おわりに
ニチレイへの不正アクセスは、
冷蔵倉庫のシステム障害から始まりました。
そして翌日には、
全国規模の外食チェーンであるKFCの営業へ影響が及びました。
これは偶然ではありません。
物流が高度にデジタル化され、
サプライチェーン全体が一つの情報基盤で結ばれているからです。
これから物流が守るべきものは、
トラックでも倉庫でもありません。
物流を動かし続ける情報インフラそのものです。
物流とは荷物を運ぶ産業ではありません。
物流とは、モノ・情報・時間を止めることなく社会へ届け続けるサプライチェーンインフラなのである。