物流業界入門

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【物流相談室①】「倉庫担当なのに物流全体のしわ寄せが来る」──現場担当者はどう立ち回ればいいのか

先日、ブログ読者の方からこのような相談をいただきました。 (一部内容を修正しています。)

「私は流通加工会社で倉庫の入出庫担当をしています。

うちの会社は繁忙期と閑散期があるのですが、今は閑散期にもかかわらず倉庫稼働率が100%近くあります。

物量は多いのに、各メーカーや元請の営業担当は個別最適で動いていて、倉庫キャパシティの把握や担当同士の調整はほとんどありません。

その結果、倉庫のやりくりは権限も情報もない倉庫担当へ丸投げされています。

これから繁忙期になりますが、とても憂鬱です。

役職もない倉庫担当は、この状況でどう立ち回ればいいのでしょうか。」

まず最初に、お伝えしたいことがあります。

あなたが感じている違和感は、決して間違っていません。

むしろ今、多くの物流現場で同じ問題が起きています。


問題は「倉庫」ではありません

一見すると、

「倉庫がいっぱいになっている」

という話に見えます。

しかし、本質はそこではありません。

本当に起きているのは、

サプライチェーン全体の情報が分断され、それぞれが個別最適で動いていることです。

営業担当は販売計画を優先する。

メーカーは生産計画を優先する。

荷主は納期を優先する。

物流会社は依頼された荷物を受ける。

それぞれが自分の立場では正しい判断をしています。

しかし、

誰も物流全体を見渡していません。

その結果、

最後の受け皿である倉庫へ、すべての負荷が集中します。

これは、あなた一人の問題ではありません。

物流構造そのものの問題なのです。


なぜ今、このような会社が増えているのでしょうか

この相談は、決して特殊なケースではありません。

近年、物流業界では「物流2024年問題」への対応が進み、トラックドライバーの時間外労働規制や輸送能力不足への対策が求められるようになりました。

その結果、多くの企業は輸送効率の改善に力を入れる一方で、在庫や保管を含めた物流全体の最適化までは十分に進んでいないケースが少なくありません。

また、需要変動への対応や欠品防止を目的として在庫を厚めに持つ企業も増えています。

そのしわ寄せが、

最後の保管拠点である倉庫へ集中しているのです。

つまり、

倉庫が苦しいのではありません。

物流全体の調整機能が追いついていないのです。


倉庫担当に権限がないのは当たり前です

ここで勘違いしてはいけないことがあります。

あなたは、

メーカーの出荷計画を変更できますか。

営業担当の受注を止められますか。

元請に納品日を変更してもらえますか。

おそらく、どれもできないと思います。

つまり、

現在起きている問題は、

あなたの権限の外側で発生しているのです。

だから、

「自分の努力が足りないのではないか」

と自分を責める必要はありません。

責任と権限は、本来セットであるべきです。

権限がない人に構造的な問題を解決することはできません。


では、何もできないのでしょうか

答えは、

いいえです。

ただし、

解決しようとする対象を間違えないことが重要です。

倉庫担当が変えられるのは、

営業の判断ではありません。

メーカーの生産計画でもありません。

変えられるのは、

現場の事実を見える化することです。

例えば、

  • 倉庫稼働率
  • 保管坪数
  • 入庫件数
  • 出庫件数
  • 滞留在庫
  • パレット占有率
  • 一時保管の発生状況
  • 作業残業時間

こうした数字を日々記録しておけば、

「大変です」

ではなく、

「現在の倉庫稼働率は98%で、あと○パレット分しか余力がありません」

という客観的な事実として伝えられます。

物流では、

感覚より数字の方が組織を動かします。


現場は「文句」ではなく「情報」を上げる

現場でよくあるのが、

「もう無理です。」

「置く場所がありません。」

という伝え方です。

もちろん気持ちは分かります。

しかし、

その言葉だけでは、

上司も営業も適切な判断ができません。

だからこそ、

事実を伝えます。

例えば、

「現在の稼働率は98%です。」

「このまま予定通り入荷すると、○日には保管場所が不足します。」

「現在○パレットが通路保管になっています。」

「この状態が続けば、入出庫作業にも支障が出る見込みです。」

このように伝えるだけで、

話は感情論から経営判断へ変わります。


あなたは「現場のセンサー」になってください

物流会社には、

現場だからこそ見える情報があります。

営業には見えません。

メーカーにも見えません。

だから、

倉庫担当の役割は、

荷物を動かすことだけではありません。

現場は物流の最下流ではありません。

サプライチェーン全体の異常を最初に検知する場所です。

だからこそ、

あなたの役割は、

現場で起きている異常を最初に知らせるセンサーになることです。

これは決して小さな仕事ではありません。

むしろ、

物流全体を支える極めて重要な役割なのです。


もし会社が動かなかったとしても

数字を伝えても、

改善されない会社もあります。

残念ながら、それも現実です。

その場合でも、

記録を残してください。

「いつ」

「どのくらい」

「何が起きたか」

を残しておくことは、

会社にとっても、

そして将来のあなた自身にとっても大きな財産になります。

物流改善は、

一日で実現するものではありません。

しかし、

現場の記録が積み重なることで、

初めて改善の必要性が客観的に見えるようになります。


おわりに

あなたの相談を読んでいて、私は「倉庫担当が悪い」のではなく、

物流全体を調整する仕組みが十分に機能していないことが、この問題の本質だと感じました。

営業は販売を伸ばそうとする。

調達は欠品を防ごうとする。

生産は効率を追求する。

物流は限られたスペースと人員で荷物を動かそうとする。

それぞれが自分の役割を果たそうとしているにもかかわらず、全体を調整する仕組みがなければ、その負荷は最後の受け皿である倉庫へ集中してしまいます。

こうした現場の課題を背景に、国も物流政策を大きく転換し始めています。

一定規模以上の企業では、物流全体を統括するCLOの選任が義務化されました。

その目的は、営業・調達・生産・物流がそれぞれ個別最適で動くのではなく、会社全体として物流を最適化するためです。

また、改正物流効率化法でも、荷主と物流事業者が連携しながら物流全体を効率化することが求められています。

つまり国も、

「現場だけの努力では物流は支えられない」

という現実を前提に、制度そのものを変え始めているのです。

だからこそ、あなたには一つだけお伝えしたいことがあります。

自分一人で物流全体を背負おうとしないでください。

あなたが抱えている悩みは、能力不足や努力不足ではありません。

権限のない現場へ、物流全体の調整役が求められてしまっている構造こそが問題なのです。

あなたにできる最も大切な役割は、現場で起きている事実を正確に記録し、数字とともに伝え続けることです。

その一つひとつの積み重ねが、会社の意思決定を変え、やがて物流全体を変える第一歩になります。

物流とは、単に荷物を運び、保管する仕事ではありません。

物流とは、現場で起きている事実をつなぎ、人・モノ・情報を結び付けながら、サプライチェーン全体を最適化し、社会を支え続けるインフラなのである。