物流業界入門

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【労働時間規制緩和を約7割が肯定】 ――変わるのは働き方ではない。「人手不足を労働時間で補う社会」へ戻る分岐点になるかもしれない

高市首相が検討を指示した「労働時間規制緩和」をめぐり、エン・ジャパンが企業の人事担当者317人を対象に実施した調査では、68%が規制緩和を肯定的に評価する一方、26%は否定的に評価しました。

肯定派からは、

  • 働きたい人がもっと働ける
  • 収入アップにつながる
  • 人手不足への対応になる

といった声が多く寄せられています。

一方で否定派からは、

  • 健康被害
  • 長時間労働への逆戻り
  • 「希望したことにされる」同調圧力

などへの懸念が示されました。

この結果を見ると、賛否は分かれています。

しかし物流の視点から見ると、本当に議論すべきなのは「残業時間」ではありません。

人手不足をどう解決するのか、その方法です。


約7割が肯定した理由

調査では約7割が規制緩和を評価しました。

その背景には、

「もっと働いて収入を増やしたい」

という現実があります。

特に、

運輸・倉庫業からも

「働けるときに働いた方が良い」

という回答がありました。

物流業界では、

2024年問題以降、

時間外労働規制によって収入が減少したドライバーも少なくありません。

そのため、

規制緩和を望む声が出ること自体は理解できます。


一方で約2割は反対している

反対派が最も懸念しているのは、

制度そのものではなく、

運用です。

例えば、

「希望制」とされても、

職場の空気や評価を気にして断れない。

結果として、

長時間労働が再び常態化する。

このリスクは調査でも複数の回答者が指摘しています。

また、

「生産性より長時間働く人が評価される風土へ戻る」

ことを懸念する声もありました。


物流業界は特に慎重であるべき

私は物流業界については、

規制緩和には慎重であるべきだと考えています。

その理由は、

物流業界が一般的なデスクワークとは異なるからです。

トラックドライバーの長時間労働は、

本人だけの問題ではありません。

事故が起これば、

荷主、

歩行者、

他のドライバー、

社会全体へ影響します。

物流は社会インフラです。

だからこそ、

安全性は経済性より優先されるべきだと考えます。


本当に足りないのは「労働時間」なのか

物流業界では、

2024年問題以降、

多くの議論が行われてきました。

共同配送。

中継輸送。

CLO。

物流効率化法。

標準的運賃。

荷待ち時間削減。

これらはすべて、

長時間労働を前提としない物流を目指すための改革です。

もし、

人手不足を

「もう少し長く働いてもらう」

ことで解決しようとするなら、

これまで積み上げてきた改革の方向性と矛盾する可能性があります。


長時間労働は解決策ではなく「延命策」

もちろん、

本人が希望して働くことを一律に否定するものではありません。

生活費を稼ぎたい人もいます。

繁忙期だけ働きたい人もいます。

しかし、

人手不足を

「一人当たりの労働時間」

で補い続ける方法には限界があります。

人口減少が進む日本では、

働く人そのものが減っています。

つまり、

労働時間を延ばしても、

構造的な人手不足は解決しません。


本当に必要なのは生産性改革

物流業界が目指すべきなのは、

長く働くことではありません。

荷待ち時間の削減。

積み降ろし効率の改善。

共同配送。

モーダルコンビネーション。

自動化。

DX。

こうした改革によって、

同じ労働時間でも、より多くの価値を生み出せる物流を構築することです。

これこそが、

物流効率化法やCLO制度が目指している方向性でもあります。


おわりに

今回の調査では、

約7割が労働時間規制緩和を評価しました。

一方で、

約2割は健康被害や長時間労働への逆戻りを懸念しています。

どちらの意見にも一定の合理性があります。

だからこそ、

議論すべきなのは

「長く働けるようにするか」

ではありません。

長く働かなくても物流が維持できる社会をどうつくるかです。

人口減少時代に必要なのは、

労働時間を増やす制度ではなく、

労働時間に依存しない物流へ転換する仕組みではないでしょうか。