物流業界入門

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【1000記事記念特別稿】物流問題は存在しない――私が1000記事書いて辿り着いた結論

気付けば、このブログも1000記事になりました。

物流ニュースを追い続け、

現場を見続け、

倉庫を見続け、

運送会社を見続け、

荷主を見続け、

行政を見続け、

そして読者の皆様と議論を重ね続けてきました。

1000記事。

数字だけ見れば単なる通過点です。

しかし私にとっては違います。

これは1000本の記事を書いた記録ではありません。

物流という巨大な社会システムを観察し続けた記録です。

物流は社会の裏側にあります。

普段は見えません。

意識されることもありません。

しかし止まった瞬間に初めて存在が認識されます。

私は1000記事を書きながら、その見えない世界を追い続けてきました。

そして今、一つの結論に辿り着きました。


物流問題は存在しない。


もちろん誤解しないでください。

ドライバー不足はあります。

荷待ち問題もあります。

倉庫不足もあります。

人手不足もあります。

運賃問題もあります。

2024年問題もあります。

事故もあります。

コンプライアンス問題もあります。

それらは現実です。

しかし1000記事を書き続ける中で、私はある違和感を持ち続けていました。

なぜ、これほど多くの問題が存在するのに、

物流そのものは止まらないのか。

なぜ、毎年のように危機が叫ばれるのに、

スーパーには商品が並び続けるのか。

なぜ、人も車も倉庫も足りないと言われながら、

物流は今日も動いているのか。


私はその答えを探し続けました。

そして辿り着いた結論が、

物流業界が抱える本当の問題は、

「接続不良」

であるということでした。


■ 第1章 物流問題とは何か

物流問題という言葉を聞くと、

・ドライバー不足

・高齢化

・人手不足

・2024年問題

・荷待ち問題

といった言葉が並びます。

どれも事実です。

しかし私は長年不思議に思っていました。


ドライバー不足と言われながら、 仕事がない運送会社がある。


倉庫不足と言われながら、 空き倉庫が存在する。


人手不足と言われながら、 仕事を探している人がいる。


本当に不足だけが原因なら、

全員が等しく困るはずです。

しかし現実は違います。

ある場所では余り、

ある場所では足りない。


つまり起きているのは不足ではありません。


必要な場所へ、

必要な人が、

必要なタイミングで、

必要な情報と共に届いていない。


問題は資源ではなく、

接続なのです。


■ 第2章 なぜ接続不良が起きたのか

ではなぜ接続不良が起きたのでしょうか。

私はここに物流業界の本質があると思っています。


かつて日本は大量生産・大量消費の時代でありました。

工場で作る。

運ぶ。

店に並べる。

売れる。


構造は比較的単純でした。


しかし今は違います。

ECが普及しました。

即日配送が当たり前になりました。

多品種少量化が進みました。

サプライチェーンは世界中へ広がりました。

消費者ニーズは細分化しました。


社会は猛烈な速度で複雑化したのです。


ところが、

物流を支える制度や商習慣の多くは、

昔のまま残りました。


長時間荷待ち。

多重下請構造。

過剰サービス。

紙文化。

責任の押し付け合い。


つまり、

社会は進化した。

しかし接続設計は進化しなかった。


これが物流問題の正体です。


■ 第3章 物流は壊れていない

私は物流業界を悲観していません。

むしろ逆です。


物流は壊れていない。


私はそう思っています。


毎日何千万個もの荷物が動いています。

スーパーには商品が並びます。

工場は動いています。

病院には医薬品が届いています。

災害が起きれば支援物資も届きます。


これほど巨大で複雑なシステムが、

毎日機能していること自体が奇跡です。


物流は壊れていません。


壊れているのは、

接続です。


荷待ち問題。

荷主は積みたい。

運送会社は走りたい。

しかし接続が悪い。


点呼問題。

法令も守りたい。

輸送も維持したい。

しかし需要と供給の接続が崩れている。


通関問題。

制度も守りたい。

顧客要求にも応えたい。

しかし制度と現場の接続が追い付かない。


私は1000記事を書きながら、

何度も同じ構図を見てきました。


問題が違うのではない。


接続不良が違う形で現れているだけなのです。


■ 第4章 物流とは何をしている産業なのか

物流はモノを運ぶ産業だと言われます。

もちろん間違いではありません。

しかし私は、それだけでは説明できないと思っています。


物流とは、

時間を運ぶ産業です。


場所を超える産業です。


需給のズレを吸収する産業です。


そして何より、

社会の接続を維持する産業です。


工場と工場をつなぐ。

メーカーと小売をつなぐ。

生産者と消費者をつなぐ。

都市と地方をつなぐ。

日本と世界をつなぐ。


物流とは、

巨大な接続装置なのです。


だから物流が止まると、

荷物が止まるのではありません。


社会が分断されます。


■ 第5章 なぜギグワーカーが増えたのか

私はギグワーカーの増加を、

単純な労働力不足とは見ていません。


ギグワーカーとは、

接続技術の進化です。


荷物はある。

仕事はある。

働きたい人もいる。


しかし従来の仕組みでは結び付かなかった。


だからアプリが生まれた。


つまりギグワーカーとは、

人材問題ではなく、

接続コストを下げる仕組みなのです。


だから今後の課題は、

ギグワーカーを否定することではありません。


どう接続するか。

どう保護するか。

どう社会インフラ化するか。


そこにあります。


■ 第6章 AIとDXは何を変えるのか

AIが仕事を奪う。

DXが人を減らす。

そんな議論をよく見かけます。


しかし私は違うと思っています。


AIもDXも、

本質は接続技術です。


紙の日報を電子化する。

配車を最適化する。

在庫を可視化する。

輸送状況を共有する。

需要予測を行う。


全て共通しています。


情報の接続コストを下げている。


だからDXの本質は、

デジタル化ではありません。


再接続です。


そしてAIとは、

人間では処理できなくなった複雑な接続を支える技術なのです。


■ 第7章 1000記事で見えたもの

1000記事の中で、

私は数え切れないテーマを書いてきました。


倉庫火災。

サイバー攻撃。

物流不動産。

物流M&A。

モーダルシフト。

外国人材。

軽貨物。

CLO。

AI。

DX。

2024年問題。

中東情勢。

荷待ち問題。

白トラ問題。

ギグワーク。


テーマは違います。

登場人物も違います。

ありとあらゆる物流を取り上げました。


しかし最後に残る問いは、

いつも同じでした。


どうつなぐのか。


人と人を。

企業と企業を。

現場と経営を。

荷主と物流を。

制度と現実を。

情報と意思決定を。


物流とは、

その問いに向き合い続ける産業だったのです。


■ 第8章 私が作りたいもの

最近、

私はあることを考えています。


物流業界には、

業界団体があります。

研究会があります。

勉強会があります。

労働組合があります。


しかし、

物流全体をつなぐ場所は存在していません。


ドライバー。

倉庫作業員。

運送会社。

荷主。

メーカー。

小売。

行政。

IT企業。

金融機関。

ギグワーカー。


全員が物流を支えている。

しかし全員が別々の言葉で話している。


だから私は、

対立を作りたいわけではありません。

誰かを悪者にしたいわけでもありません。


私がやりたいのは、

再接続です。


物流を再びつなぐこと。


現場と経営を。

荷主と物流を。

制度と現実を。

人とデータを。


それが私の次の1000記事のテーマです。


■ 終章

物流は何を運んでいるのか。


多くの人は、

モノ

と答えます。


少し詳しい人は、

情報やお金も運んでいる

と言います。


しかし1000記事を書いてきた私の答えは違います。


物流が運んでいるのは、

社会です。


病院に薬が届く。

工場に部品が届く。

スーパーに食品が並ぶ。

災害地に支援物資が届く。


その全てが社会そのものです。


だから物流問題は、

物流だけの問題ではありません。


社会の接続問題です。


そして私は1000記事を書いて、

ようやく分かりました。


物流の本質は、

輸送ではない。

倉庫でもない。

トラックでもない。

DXでもない。

AIでもない。


物流の本質とは、

分断されたものをつなぎ続けること。


私は物流を変えたいのではありません。


物流を理解できる社会を作りたいのです。


なぜなら、

物流とは社会そのものだからです。


物流問題は存在しない。


存在するのは、

接続不良だけである。


1000記事を書いた今、

私はそう考えています。

そして次の1000記事もまた、

「どうつなぐか」

を問い続けることになるでしょう。