出版物流が危機にある――。
そんな言葉を最近よく目にします。
雑誌の発行部数は激減。
書店は減少。
そしてついに、取次によるコンビニ配送の撤退まで起き始めています。
ある記事では、こう指摘されています。
「本を運べば運ぶほど赤字になる」
出版物流は、まるで「崩壊寸前」のように語られます。
しかし私は、この問題を
物流の構造から見るべきだと思っています。
結論から言えば
出版物流はピンチではなく、むしろチャンスです。
なぜなら
日本物流が抱える構造問題が、最も分かりやすく表れている産業だからです。
1|出版物流は「特殊すぎる物流」
まず理解すべきことがあります。
出版物流は
普通の物流とは構造がまったく違うということです。
出版流通には独特の仕組みがあります。
日本の出版流通
出版社
↓
取次(トーハン・日販など)
↓
書店
↓
読者
ここで重要なのは
返品制度(委託販売制)
です。
書店は売れなかった本を
ほぼ無条件で返品できる。
その結果、出版物流では
- 配送
- 回収
- 再配送
という往復物流が発生します。
つまり出版物流とは
「売る物流」ではなく
「売れるか分からないものを流す物流」
なのです。
これは物流として
極めて非効率な構造です。
2|雑誌崩壊が物流を直撃した理由
出版物流を長年支えてきたのは
雑誌
でした。
理由は単純です。
雑誌は
- 発行部数が多い
- 定期配送
- コンビニ販売
つまり
物流の固定需要
だったのです。
ところが現在、
雑誌市場は壊滅的に縮小しています。
スマホ
SNS
動画メディア
情報消費の中心は
完全にデジタルへ移行しました。
その結果起きたのが
物流の固定需要の消滅
です。
物流は量が減ると
急激にコストが上がります。
出版物流が赤字になるのは
むしろ当然の結果なのです。
3|コンビニ撤退は「崩壊」ではない
出版物流のニュースで
象徴的だったのがこれです。
取次のコンビニ配送撤退
多くの人はこれを
出版物流の崩壊
と捉えます。
しかし物流視点で見ると
これは
正常化のプロセス
です。
これまでの出版物流は
- 低運賃
- 高返品率
- 非効率配送
という
持続不能な構造
でした。
さらに今後は
物流法改正の影響もあります。
運賃は適正化される方向です。
その結果
従来のモデルが成立しなくなる
のです。
しかしこれは
物流全体で起きていることです。
宅配
食品
アパレル
すべて同じです。
つまり出版物流だけが
特別なわけではありません。
4|実は出版物流は“DXの宝庫”
ここで視点を変えましょう。
出版物流は
実は
物流DXの実験場
になり始めています。
例えば
- 少部数印刷
- オンデマンド出版
- 書店主体発注
- データ連動物流
といった新しい仕組みです。
大日本印刷などは
出版流通のDXプラットフォームを構築し
物流や商流の無駄を減らす取り組みを進めています。
つまり出版物流は
従来の
「押し込み流通」
から
「需要連動物流」
へ変わり始めているのです。
これは物流業界全体が
目指している方向でもあります。
5|出版物流は日本物流の未来を映す
出版物流の問題は
出版業界だけの問題ではありません。
むしろこれは
日本物流の縮図
です。
ここには
日本物流の課題が
すべて詰まっています。
- 低運賃構造
- 多頻度配送
- 過剰在庫
- 非効率返品
- 人手不足
つまり出版物流とは
物流構造の“限界点”
なのです。
そして
限界点に達した産業から
改革が始まる
のが歴史です。
結論|出版物流は崩壊ではない
出版物流は確かに
厳しい状況です。
しかし
物流の歴史を見れば
危機のときにこそ構造転換が起きる
ことが分かります。
かつて
- 宅配便
- コンビニ物流
- EC物流
もすべて
物流危機の中から生まれました。
出版物流も同じです。
今起きているのは
崩壊ではなく再設計
です。
そしてこの再設計は
出版業界だけではなく
日本物流全体の未来
にもつながっていくでしょう。
編集後記|出版物流は“次の物流モデル”になる
出版物流は長年
「遅れた産業」
と言われてきました。
しかし逆に言えば
まだ変革余地が大きい
ということでもあります。
もし
- データ連動物流
- 需要連動生産
- 小ロット配送
が完成すれば
出版物流は
次世代物流のモデル
になる可能性すらあります。
危機は終わりではありません。
むしろ
構造改革の始まり
です。