2026年3月。
米国で、静かだが決定的な変化が起きています。
米EC最大手である Amazon が、
米郵政公社である USPS との配送契約更新に至らず、
ラストマイル配送の大幅削減(最大3分の2)
に踏み切る見通しとなりました。
これは単なる契約交渉の決裂ではありません。
ラストマイルは「外注する機能」から「握るべき支配領域」へ変わった
ことを示す、極めて象徴的な出来事です。
そしてこの構造は、確実に日本にも波及します。
1|AmazonはなぜUSPSを減らすのか
Amazonはこれまで、
・USPS(郵便)
・UPS
・FedEx
といった既存キャリアを活用しながら配送網を拡大してきました。
しかし現在、その戦略は明確に変化しています。
「使う側」から「自ら運ぶ側」へ
です。
背景にあるのはシンプルです。
- ECは配送品質が競争力そのもの
- ラストマイルは顧客体験の最終接点
- 外注ではコントロールできない
つまりAmazonにとって配送は、
コストではなくプロダクトの一部
なのです。
2|ラストマイルは「最も非効率で、最も重要な領域」
物流の中で最もコストが高いのは、
ラストマイル配送
です。
- 個別配送
- 不在対応
- 再配達
- 都市渋滞
効率の観点では“最悪”の領域です。
しかし同時に、
顧客が唯一体験する物流でもある
という特性を持ちます。
この矛盾こそが、
Amazonが外注から脱却する理由です。
3|USPS側の事情──公共インフラの限界
一方のUSPSは、
公共インフラとしての制約
を抱えています。
- 料金設定の自由度が低い
- 政策的役割(ユニバーサルサービス)
- 財務制約
今回の報道では、
資金枯渇の可能性(10〜11月)
まで示唆されています。
つまり、
民間最適化 vs 公共インフラ維持
という構造的な衝突が起きています。
4|これは「契約問題」ではなく「構造転換」である
今回の本質は、
AmazonとUSPSの関係ではありません。
「物流は誰が握るのか」という構造の再定義
です。
従来:
メーカー・EC
→ 物流会社へ委託
現在:
ECプラットフォーマー
→ 物流を内製化・統合
この変化により、
物流企業は
「主役」から「選択される機能」へ
と立場が変わりつつあります。
5|日本へのインパクト──これは他人事ではない
この動きは、そのまま日本に重なります。
日本でも
・ヤマト運輸
・佐川急便
・日本郵便
がラストマイルを担っています。
しかし、
- EC依存の拡大
- 再配達問題
- 人手不足
という構造は米国と同じです。
ここで重要なのは、
Amazonが日本でも同じ判断をする可能性
です。
すでに日本でも、
・自社配送網の拡張
・委託ドライバーの活用
は進んでいます。
今回のUSPS削減は、
その流れが「不可逆」であることの証明
です。
6|物流企業に突きつけられた現実
この構造変化の中で、
物流企業に求められるのは明確です。
①「運ぶだけ」からの脱却
単なる配送ではなく、
- 在庫最適化
- データ連携
- 需要予測
まで踏み込めるか。
② プラットフォームへの依存リスク管理
Amazonのような巨大顧客に依存すると、
契約一つで需要が消える
リスクを抱えます。
③ ラストマイルの再定義
- 置き配
- 共同配送
- 受取拠点
など、
個別配送以外のモデル構築が不可欠です。
結論|ラストマイルは「最後の工程」ではなく「主戦場」へ
AmazonによるUSPS依存の縮小。
これは単なるコスト見直しではありません。
ラストマイルを制する者が、ECを制する
という戦略の明確化です。
そしてこの変化は、
確実に日本にも波及します。
物流企業がこの先問われるのは、
「どれだけ運べるか」ではなく
「誰の物流を支配するのか」
です。
ラストマイルはもはや末端ではありません。
物流の主戦場そのものです。