経団連の筒井義信会長が記者会見で、
「追加利上げは難しい局面にある」
との認識を示しました。
背景にあるのは中東情勢の緊迫化です。
原油価格上昇による物価高。
そして景気減速。
いわゆるスタグフレーションへの警戒です。
一見すると、
「原油が上がるから景気が悪くなる」
という話に見えます。
しかし物流の現場から見ると、 少し違う景色が見えています。
問題は原油ではありません。
問題は、
原油高を価格転嫁できない日本の構造そのものです。
■ 原油価格は物流コストそのものである
物流は燃料で動きます。
- トラック
- フォークリフト
- 冷凍機
- 船舶
- 航空貨物
すべてエネルギー消費産業です。
つまり原油高は、
物流企業にとっては
「仕入価格上昇」
と同義です。
本来であれば、
軽油価格が上がれば運賃も上がる。
これは市場原理として自然です。
しかし日本では長年、
荷主優位の構造が続いてきました。
■ 日本の物流は価格転嫁が極端に苦手
物流業界では今も、
燃料費が上がっても
簡単には運賃改定できません。
なぜか。
物流が
「コスト」
として扱われているからです。
荷主企業の多くは、
物流費を利益を生まない経費として見ています。
結果として、
物流会社は
- 燃料高騰
- 人件費上昇
- 車両価格上昇
を自社で吸収し続けてきました。
これは正常な市場ではありません。
■ 利上げが怖いのではない
今回の発言を読むと、
経団連が本当に恐れているのは
利上げそのものではないように見えます。
企業は今、
既にコスト上昇に直面しています。
- 原材料高
- 人件費上昇
- エネルギー高
ここへ利上げが加われば、
借入コストまで増える。
問題はその先です。
もし企業が価格転嫁できるなら、
利上げはそこまで怖くありません。
しかし価格転嫁できない企業は、
利益を削るしかありません。
つまり、
経団連が警戒しているのは
金利ではなく、
利益を確保できない経済構造です。
■ スタグフレーションは物流から始まる
スタグフレーションとは、
景気が弱いのに物価だけ上がる状態です。
物流はこの現象が最初に現れやすい業界です。
なぜなら、
物流は全産業の共通インフラだからです。
運賃が上がる。
↓
製造コストが上がる。
↓
小売価格が上がる。
↓
消費が減る。
↓
景気が悪化する。
物流は常に最前線にいます。
だからこそ、
物流業界を見ると
景気の変化が早く見えるのです。
■ 物流現場ではすでに異変が起きている
最近の物流ニュースを見ると、
共通した現象が増えています。
- 日本郵便の点呼不正
- SGJの通関許可取消
- ドライバー不足
- 荷待ち問題
- 中小運送会社の資金繰り悪化
これらは別々の問題ではありません。
共通するのは、
処理能力を超えた需要圧力です。
コストは上がる。
人は増えない。
価格転嫁は難しい。
しかし荷物は止められない。
その結果、
現場が無理を吸収する。
今の物流業界はまさにその状態です。
■ 違和感の正体
このメディアニュースの違和感は、
原油価格や利上げを問題視しているようで、
実はその背後にある
「価格転嫁できない構造」
に触れていないことです。
原油高は原因ではありません。
症状です。
本当に問うべきは、
なぜ日本企業はコスト上昇を適切に市場へ反映できないのか。
なぜ物流企業は利益を残せないのか。
なぜ現場が吸収し続ける前提になっているのか。
そこです。
■ 結論|問題は原油ではなく構造である
中東情勢は確かに重要です。
原油価格も重要です。
しかし、
それ以上に重要なのは、
そのコストを適切に流せる仕組みです。
物流が健全に価格転嫁できる社会なら、
原油高は一時的な負担で終わります。
しかし、
現場の我慢を前提にした社会では、
原油高は企業体力を削り続けます。
だから今回のニュースは、
「利上げするかどうか」
ではありません。
本質は、
日本経済がいまだに物流をコスト扱いしている構造問題にあります。
そしてその歪みが、 今まさに物流現場から噴き出し始めているのです。
物流軍師の視点
原油価格が上がったから苦しいのではありません。
価格転嫁できないから苦しいのです。
利上げが怖いのでもありません。
利益を残せない構造が怖いのです。
そして物流とは、
その構造の歪みが最初に現れる場所なのです。