──「トラックを減らす話」ではない。本質は物流能力の再設計である
物流ニュースを見ていると頻繁に出てくる言葉があります。
モーダルシフト
国も推進している。
大手荷主も取り組んでいる。
物流表彰でも必ず出てくる。
しかし実際には、
「なんとなく環境対策」
程度の認識で止まっている人も少なくありません。
ですが本質はもっと深い。
モーダルシフトとは、
単なるCO2削減ではありません。
「物流を維持するための生存戦略」
です。
■ モーダルシフトとは?
まず定義から整理します。
モーダル(Mode)とは、
輸送手段のことです。
つまりモーダルシフトとは、
輸送手段を切り替えることを意味します。
例えば、
従来
- トラック → トラック → トラック
モーダルシフト後
- トラック → 鉄道
- トラック → 船舶
- 船舶 → 鉄道
などです。
日本では主に、
トラック輸送を鉄道や船へ移す
ことを指します。
■ なぜ今モーダルシフトなのか
理由は単純です。
トラックが足りないからです。
2024年問題以降、
ドライバーの労働時間規制が強化されました。
すると何が起きたか。
運べる距離が短くなったのです。
例えば、
東京から福岡。
以前は1人のドライバーで対応できた仕事も、
今は途中交代や中継輸送が必要になります。
つまり、
同じ荷物を運ぶのに必要な人員が増える
ということです。
一方で、
ドライバー人口は減少しています。
高齢化も進んでいます。
つまり、
荷物は増える
運ぶ人は減る
という構造です。
この矛盾を解決する方法のひとつが、
モーダルシフトです。
■ 鉄道1本の輸送力は想像以上
例えば貨物列車。
1編成で大型トラック数十台分を運べます。
つまり、
ドライバー数十人分の仕事を
少人数で実現できるのです。
船舶ならさらに大きい。
大型フェリー1隻で、
数百台分のトラック輸送を代替できます。
だから国は、
モーダルシフトを
物流政策の中心に置いています。
■ 実は昔から存在していた
モーダルシフト自体は新しい話ではありません。
国土交通省は20年以上前から推進しています。
しかしなかなか進みませんでした。
理由があります。
トラックの方が便利だからです。
トラックは、
- ドアツードア
- 小ロット対応
- 時間指定対応
- 柔軟なルート変更
ができます。
つまり、
荷主から見れば使いやすい。
一方、
鉄道や船は、
- 発着時間固定
- 積み替え必要
- 遅延時の柔軟性が低い
という弱点があります。
だから、
理想論だけでは普及しなかったのです。
■ それでも流れが変わった
近年、
物流業界の前提条件が変わりました。
以前
トラックはいつでもいる
現在
トラックが確保できない
以前
運賃は安い
現在
運賃は上昇
以前
人が無理すれば回る
現在
法律で無理ができない
つまり、
トラック一極集中モデルが限界を迎えています。
■ 日本通運の受賞事例が象徴的
今回の日本物流大賞で受賞した
日本通運の
「紙と自動車の異業種ラウンドマッチング輸送」。
これもモーダルシフトです。
紙を運んだコンテナが、
帰りは空だった。
そこへ自動車を積んだ。
すると、
- 空回送削減
- CO2削減
- 労働時間削減
が同時に実現しました。
ここで重要なのは、
鉄道を増やしたわけではないことです。
空いていた物流能力を埋めた
だけです。
物流改革とは、
新しい設備を作ることではなく、
既存設備を使い切ることでもあります。
■ 実はモーダルシフトにも限界がある
ここは冷静に見る必要があります。
モーダルシフトは万能ではありません。
例えば、
- 宅配便
- スーパー配送
- コンビニ配送
- ラストワンマイル
これらは基本的にトラックが必要です。
鉄道は家の前まで来ません。
船も店舗の裏口まで来ません。
つまり、
モーダルシフトができるのは主に
長距離幹線輸送
です。
最終的にはトラックが必要になります。
■ 本質は「トラックをなくす」ではない
勘違いされがちですが、
モーダルシフトは
トラック不要論ではありません。
むしろ逆です。
長距離を鉄道や船に任せることで、
トラックは
- 地域配送
- 集荷
- ラストワンマイル
に集中できる。
つまり、
トラックを守るためのモーダルシフト
なのです。
■ 結論|モーダルシフトとは物流能力の延命装置である
多くの人は、
モーダルシフトを
環境対策だと思っています。
もちろんそれも正しい。
しかし本質は別にあります。
物流業界が直面しているのは、
- ドライバー不足
- 労働時間規制
- 燃料高騰
- 高齢化
です。
つまり、
輸送能力不足です。
だからモーダルシフトとは、
「環境活動」
ではなく、
「物流能力を維持するための構造改革」
なのです。
これからの物流は、
どれだけトラックを走らせるかではありません。
どの輸送モードに、どの荷物を乗せるか
を設計する時代です。
モーダルシフトとは、
まさにその入り口なのです。