物流業界入門

物流業界の基礎から最新トレンドまで、現場経験を活かしてわかりやすく解説!

【多業種物流儀⑬】食品物流(スーパーマーケット物流)──スーパー物流センターは“保管庫”ではなく、食品の流れを設計する装置である

スーパーへ行けば当たり前のように商品が並んでいます。

牛乳がある。 野菜がある。 弁当がある。 冷凍食品がある。

しかし考えてみてください。

これらは温度も違えば、賞味期限も違う。 仕入先も違えば、輸送方法も違う。

それでも毎朝、同じ売場に並んでいる。

実はここに、日本の物流が持つ極めて高度な仕組みがあります。

食品物流とは単に「運ぶ仕事」ではありません。

時間・温度・在庫を制御しながら、食品の流れを止めない産業です。


■ スーパー物流の本質は「流れを作ること」

物流センターと聞くと、

「商品を保管している巨大な倉庫」

を想像する人が多いかもしれません。

しかしスーパー物流の現場は少し違います。

もちろん在庫を保有するDC(在庫型センター)もあります。

調味料 菓子 飲料 加工食品

などは在庫を持ちながら需給調整を行います。

一方で、

牛乳 豆腐 惣菜 生鮮品

などは長期間保管できません。

そこで活躍するのが、

TC(通過型センター) (Transfer Center)

です。

メーカーから届いた商品を保管せず、

店舗別に仕分けして即出荷する。

つまり物流センターは、

「保管する場所」

ではなく、

「流れを止めない仕組みを作る場所」

なのです。


■ なぜスーパーは物流センターを持つのか

もし物流センターがなければどうなるでしょう。

例えば1店舗に

牛乳メーカー パンメーカー 豆腐メーカー 飲料メーカー 菓子メーカー

がそれぞれ直接納品します。

すると店舗には1日中トラックが出入りします。

荷受け担当者は対応に追われます。

バックヤードは混乱します。

そこでスーパーは物流センターを使います。

メーカーはセンターへ納品。

センターがまとめて店舗へ配送。

これが

一括物流(集中納品)

です。


結果として、

  • トラック台数削減
  • 店舗荷受け効率向上
  • 納品時間短縮
  • CO₂削減
  • ドライバー不足対策

が同時に実現します。


■ 食品物流は「温度」が命

食品物流最大の特徴は温度管理です。

一般貨物と違い、

運べば終わりではありません。

品質維持そのものが仕事になります。


常温(ドライ)

  • 菓子
  • 飲料
  • 調味料
  • 加工食品

比較的管理しやすい商品群です。


チルド・生鮮

  • 牛乳
  • 豆腐
  • 野菜

数℃単位で品質が変わります。

物流が止まれば即座に鮮度へ影響します。


冷凍(フローズン)

  • アイス
  • 冷凍食品
  • 冷凍肉
  • 冷凍魚介類

マイナス18℃以下での管理が基本です。

温度逸脱は品質劣化に直結します。


米飯・惣菜帯

実は弁当や惣菜は少し特殊です。

冷やしすぎると品質が落ちます。

ご飯が硬くなるためです。

そのため大手スーパーやコンビニでは、

15~18℃前後で管理する

「米飯帯」 「デリカ帯」

を設けているケースもあります。


■ スーパー物流が最も嫌うもの

それは欠品です。


工業製品なら

「明日納品します」

で済むことがあります。

しかし食品は違います。

今日売る商品は今日必要です。


夕方に弁当が届く。

閉店前に牛乳がなくなる。

アイスケースが空になる。


これだけで売上は失われます。

顧客も離れます。

だから食品物流は

止まることが許されない物流

なのです。


■ 2024年問題で何が起きたのか

食品物流は2024年問題の影響を最も受けた業界の一つです。

理由は単純です。

食品は待てないからです。


これまで物流現場は、

  • 毎日配送
  • 多頻度配送
  • 深夜配送
  • 長時間待機

で成り立っていました。

しかし労働時間規制によって、

それらの前提が崩れ始めました。


結果として、

店舗側も変わる必要が出てきました。

  • 荷受時間の見直し
  • 納品回数削減
  • 発注精度向上
  • バックヤード運営改善

です。


つまり2024年問題とは、

ドライバー問題ではありません。


食品サプライチェーン全体の再設計問題だったのです。


■ 現場視点

現場は極めてシビアです。

温度を守る。

時間を守る。

欠品を出さない。

誤納品をしない。


さらに近年は、

人手不足 高齢化 燃料高

も重なっています。


食品物流は、

物流業界の中でも特に

「止められない物流」

です。


■ 経営視点

経営側が見ているのは在庫です。

食品は持ちすぎても損。

持たなすぎても欠品。


つまり、

在庫を減らしたい経営と

欠品を防ぎたい現場

のバランスを取らなければなりません。


食品物流企業の競争力とは、

トラック台数でも倉庫面積でもありません。


需要予測精度

です。


何を。 どこへ。 いつ。 何ケース。

届けるか。

これを外せば利益は消えます。


■ 消費者視点

消費者から見れば、

スーパーに商品が並ぶのは当たり前です。

しかしその裏では、

メーカー 物流センター 運送会社 店舗

が分単位で連携しています。


欠品しない。

鮮度を保つ。

適正価格で提供する。


これらは全て物流コストによって支えられています。


■ 私の考察

食品物流を見ていると、

物流とは「運ぶ産業」ではないことが分かります。


本質は、

流れを設計する産業

です。


スーパー物流センターは倉庫ではありません。

巨大な流量制御装置です。


食品を止めない。

店舗を止めない。

生活を止めない。


私たちが毎日当たり前に買い物できるのは、

この巨大な流れが24時間365日維持されているからです。


そして2024年問題で露呈したのは、

その流れが現場の善意だけでは維持できなくなったという事実でした。


食品物流とは、

単なる配送業ではありません。


社会インフラそのもの。

だからこそ今後は、

「どう運ぶか」ではなく、

「どう流れを設計するか」

が問われる時代になっていくのです。