
中東情勢の緊迫化を受け、全国建設産業団体連合会(全国建産連)が国土交通省に緊急要望を行いました。
要望内容は大きく2つです。
- 石油製品の安定供給対策
- 白トラ規制の緩和・軽減
前者については理解できます。
燃料価格の上昇は建設業にも物流業にも直撃するためです。
しかし後者については、私は強い違和感を覚えました。
なぜなら、
「人手不足だからルールを緩めよう」
という発想は、物流業界が長年陥ってきた失敗と全く同じだからです。
■ そもそも白トラとは何か
白トラとは、
自家用ナンバー(白ナンバー)の車両で、 本来許可が必要な有償運送を行う行為です。
貨物運送事業は本来、
- 緑ナンバー取得
- 運行管理
- 点呼
- 整備管理
- 保険加入
- 法令順守
などの義務を負っています。
一方で白トラは、
これらのコストを負わずに運送を行えるため、 適法事業者との競争を歪める存在として問題視されてきました。
2025年以降、 国は白トラ対策を強化しています。
つまり今回の要望は、
厳しくなった規制を一部緩和してほしい
という話です。
■ 建設業界の主張も理解できる
もちろん現場事情は理解できます。
建設現場では
- ダンプ不足
- ドライバー不足
- 工事量増加
が続いています。
災害発生時には
- 土砂運搬
- がれき撤去
- 資材搬送
が必要になります。
そのため
「現場内や周辺移動くらいは柔軟に認めてほしい」
という声が出るのは自然です。
実際、 建設現場では工事そのものよりも運搬能力不足がボトルネックになるケースも少なくありません。
■ しかし規制緩和は問題の解決にならない
ここで重要なのは、
なぜダンプが足りないのか
です。
足りないから規制を緩める。
この発想は危険です。
物流業界も長年、
- 荷待ち
- 長時間労働
- サービス残業
- 名ばかり運賃
を
「現場の頑張り」
で吸収してきました。
結果として何が起きたか。
2024年問題です。
不足を制度で解決せず、 現場に押し付け続けた結果、
限界が来たのです。
■ 白トラ容認は市場を壊す
仮に白トラを広く認めればどうなるでしょう。
短期的には輸送能力が増えます。
しかし中長期では逆です。
適法事業者は
- 車検
- 保険
- 点呼
- 管理者配置
などのコストを負っています。
そこへ規制コストを負わない白トラが参入すれば、
当然ながら価格競争になります。
結果として、
真面目な事業者ほど苦しくなる。
これはライドシェア議論でも繰り返されている構図です。
■ 実は物流業界も同じ問題を抱えている
私は以前から言っています。
今の物流業界は
「人手不足」
ではありません。
正確には
適正価格で運べる事業者が不足している
のです。
建設業界も本質は近い。
ダンプ不足ではなく、
適正な条件で稼働できるダンプが不足している。
ここを履き違えると、
また同じ問題を繰り返します。
■ 本当に必要なのは例外措置ではなく構造改革
仮に災害時などで例外措置が必要なら、
対象を限定して制度化すべきです。
しかし恒常的な人手不足への対応として白トラ規制を緩めるのは違います。
本来やるべきは、
- 適正運賃の確保
- 労務費転嫁
- ダンプ運転手の待遇改善
- 若手人材確保
- 荷主・発注者側の責任明確化
です。
供給不足をルール緩和で埋めるのではなく、
供給そのものが育つ環境を作るべきです。
■ 私が感じた本当の違和感
今回の記事を読んで感じた違和感は、
白トラ規制そのものではありません。
「供給不足になったら規制を緩める」という発想です。
日本はこれまで、
- 長時間労働
- サービス残業
- 荷待ち
- 下請け構造
を使って問題を先送りしてきました。
その結果が今です。
建設業界も物流業界も、
本当に向き合うべき相手は規制ではありません。
供給不足を生み出している構造です。
■ 終わりに
白トラ規制を緩和すれば、 一時的には現場は楽になるかもしれません。
しかしそれは、
熱が出た患者に解熱剤だけを渡している状態に近い。
症状は和らぎます。
しかし病気そのものは治りません。
今必要なのは規制緩和ではなく、
なぜ適法な輸送能力が足りなくなったのかを直視することです。
物流も建設も、
本当の課題は「人手不足」ではありません。
現場の善意と無理に依存し続けた構造そのものが限界を迎えている。
私はそう見ています。